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馬跳びの馬だつたわたし 校庭は…(黒木三千代) @現代短歌の鑑賞101

馬跳びの馬だつたわたし 校庭はゆふぐれのうすい墨の香がして 
黒木三千代

馬跳びの馬。
前屈の姿勢で目に映るのは、自分自身の薄墨色の影だけである。
その自分の背中を飛び越えて、たくさんの同級生たちが先へ行く。
その眩しさ。
追いつけない、ほの暗い思い―――

そんな少女時代の心象風景に触発されて、自分自身の子供時代に思いを馳せてしまう。

だけど、どうしてだろう。
今振り返ってみると、子供時代のほの暗い思いもひっくるめて、それはなんだか眩しく感じるのだ。
あのころは良かったなんて年寄じみた言葉は好きではないけれど、まさしくそれなのだ。

水墨画は、薄い墨で翳りも眩しさも表現できるという。
子供時代の心象風景も同じように、完成された情景としてみるとき、うすい墨の色と香りは、ひかりに変わるものかもしれない。


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