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たつた一人の母狂はせし夕ぐれを…(前川佐美雄) @現代短歌の鑑賞101

たつた一人の母狂はせし夕ぐれをきらきら光る山から飛べり 
前川佐美雄/『大和』S15

狂気の一番美しい瞬間がこの歌にはあるように思う。

不甲斐なさとか、やるせなさとか、絶望とか。狂気の引き金となったすべてをひっくるめて、身を投下する瞬間。
マイナスの感情が臨界点を迎えたとき、喜怒哀楽や倫理観を超えて、一瞬、ほんの一瞬だけ、きらきらした悦楽が入り込むのではないか。

この歌に共感できる、とは言いにくい。
だけど、例えば、言いようのないやるせなさに襲われたとき。
私はこの歌に親しくなれる。

「きらきら光る」なんてわかりやすすぎる単純な表現が、その狂気と相まって、解釈を超え、乱れた気分にぐっと入り込むのだ。
もしかしたらその時の私は、狂気に近づきたがっているのかもしれない。
一枚の絵の様な、きらきらした瞬間で止まっている狂気に。

だけど、現実は瞬間を止めることはできない。
最後の戯れのように、自分のやるせなさが歌と親しんだあとは、また前を向いて進んでいくだけだ。
掲出歌は、負の感情のやどり木のような歌とも言えるかもしれない。


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