うたよむブログ

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はらわたに花のごとくに酒ひらき・・・(石田比呂志) @現代短歌の鑑賞101

はらわたに花のごとくに酒ひらき家のめぐりは雨となりたり  
石田比呂志/『滴滴』S61

いろいろな思いがこもった独りの歌だと思う。
外はもちろん雨なのだが、「家のめぐり」という区切り方がさびしい。
降る雨の縦ラインがまるで牢のように感じる。もしくは針が降っているのか。
家の内と外。外は暗い。

一方、内はやわらかく、暖かい。
内臓に酒がしみわたる感じを、花に見立てて「ひらく」という。
感覚がよく伝わってくる。

そして、そのはらわたの感覚に意識を向けるように、作者の意識は、外の雨をよそに内へ内へと向かっていくのだ。

雨が降りしきる現実からは逃れられない。けれど、時折内に持つ暖かな世界で休息するのだ。
そのひとときの歌なのではないかと思う。


ところで『現代短歌の鑑賞101』に載っている石田さんの歌は、30首中29首が酒の歌なのだ。
そのため、最初は酒の歌を中心に歌う人なのかと思ってしまった。
しかし、後日91年に出た『現代の短歌』(講談社)を見たら、そんなことは全くなくてびっくりした。
逃れられない外の世界と戦い、また世界のありようを見出す歌人でもあった。

『現代短歌の鑑賞101』は、自選30首を掲載しているという。そう考えると、本人がほとんど酒の歌を選んだのには立ち位置など何かしらの意図があるものだと思う。

酒以外の歌でも心ひかれたものはたくさんあったので、いくつか下にひいておきたい。


〈職業に貴賎あらず〉と嘘言うな耐え苦しみて吾は働く

遠くにて鳩群れ遊ぶ園が見え掴みたきまでに羞(やさ)し小世界

その浮力奪われながらゆっくりと引き下ろさるる春の気球は

蛍とぶかの曳航を抒情せんまこと未練の武士(もののふ)ぞわれ



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