うたよむブログ

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積まれある柘榴ひとつが転がると・・・(木曽陽子)

積まれある柘榴ひとつが転がると総崩れせるまぼろしのあり  
木曽陽子/『モーパッサンの口髭』

木曽陽子さんの『モーパッサンの口髭』より。

なんという幻視だろう。
ここには外なる崩れと内なる崩れの両方がある。

かごか何かに積まれている赤いザクロが、何かの拍子に一個落ちる。
「あっ」と思う。
たしかに瞬間的にヒヤッとした感覚というのは、おおよそ現実の事象と比べて、ずっと大きな反応になる。
そこで総崩れを感じたのだ。

そしてそれは見た目上のいわば外なる崩れ。

一方、ザクロの中身はびっしりとルビーのような赤い粒がひしめいている。
「総崩れせるまぼろし」と読み進めたとき、この小さな粒も瞬時にパッと輝いて散ってゆく様を私は見た。
総体が崩れるとき、内なる個々も散ってゆく。
そんな幻視を抱いたのだ。

内なる崩れとはなんだろう。
リンゴがごろりと崩れるのとは確かに違う。
美しい色彩と合わせて、何か原理的なものをこの歌から感じたのだ。


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