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岩の上に時計を忘れ来し日より・・・(前登志夫) @現代短歌の鑑賞101

岩の上に時計を忘れ来し日より暗緑のその森を怖る  
前登志夫/『子午線の繭』S39

不思議な感覚を呼び起こさせる歌だ。

「暗緑のその森」という表現から、とらえきれない自然の不気味な奥深さを感じ取ることができる。
そこに時計を置き忘れたという。

時計とは、悠久の世界を便宜的に人間が区切ったものといえる。
それを暗い森に忘れたというのは、刻む時間そのものが呑みこまれてしまったような趣がある。
少なくとも時計が森を支配することはないだろう。
逆に、時間を刻むという概念が、森に呑まれることによって無意味となってしまったようだ。
そして、その「時」の概念に沿って生きてきた自らも森に曳かれてゆく印象がある。

刻んで進む時とはなんだろう。
ここは、時代によって、個人の経験によって、さまざまな解釈ができそうだ。
自然と人間(特に個人)の二律背反ではなく、時が無意味となり、自然に呑みこまれる情景。
この感じは以前読んだ、山中智恵子さんの「行きて負ふかなしみぞここ鳥髪に…」でも感じた。

とらえどころのない自然の内に生きざろうえない個。
そんな不可避な事実を三十一文字で歌い上げてしまえることにも驚いてしまう。


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