うたよむブログ

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いくつかのやさしい記憶新宿に・・・(俵万智) @現代短歌の鑑賞101

いくつかのやさしい記憶新宿に「英(ひで)」という店あってなくなる  
俵万智/『かぜのてのひら』H3

長年住んでいるときは街の変化なんか全然感じないのに、しばらく離れて帰って来た時の街の変わりようというのは、目を見張るものがある。
なぜだろう。

繁華街にあって老舗になれるのはほんの、本当にほんの一握りだ。
ほとんどの店は、人の寿命よりも短い命だろう。
もちろん経営者はそんなつもりで経営しているはずはない。
けれど多くが夢破れるのである。

そこには客に見えない大きな物語がある。
客に見えるのは、その夢の断片の、そのお店やオーナーとの「やさしい記憶」のみである。

経営者の大きな夢、お客側の断片的な記憶、お客ですらなかった人やお客ではなくなった人の「あってなくなる」だけの気づき。
掲出歌はそれらを全部込めている。
一つのお店をめぐる、この差異がとてもさみしいのである。
だけど、その集合体が街というものなのだろう。


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