うたよむブログ

ARTICLE PAGE

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

月させば梅樹は黒きひびわれと・・・(森岡貞香) @現代短歌の鑑賞101

月させば梅樹は黒きひびわれとなりてくひこむものか空間に  
森岡貞香/『白蛾』S28

夕焼けでこそ人は空を見上げるけれど、その後の夜になるまでの間。
ここで空を見上げる人はどれくらいいるのだろう。
夜になりきらない空の時間。
十五分程度の不思議な時間である。

例えば県境の国道を車で走っていると、遠くの森の影がまるで空を破っているかのように見えることがある。
紙をびりびり破いた境界のような、森の闇と空の群青。
そういう時間が夕焼けが終わった後に少しだけ現れるのだ。

森岡さんの歌も、そのようなわずかな時間のものだろう。

夜を待つ空に明るい月がさす。
手前にある梅の樹は逆光で翳り、黒いシルエットとなる。
その木が空に向けて枝を伸ばしている様子は、群青のほの明るい空を裂く、黒いひび割れのように見えたのだろう。

ここには視点の反転がある。
樹は黒いけど確かに存在するものだ。
しかし「ひびわれ」と詠まれることで、樹はただの深い闇となる。
そして、触れることなどできない空が裂かれる、実体のあるものとして映るようになるのだ。
情景が不思議な反転を見せるわずかな時間を掬いとった、不思議な感覚の歌だと思う。

森岡さんの歌には、このような不思議な感覚を表したものが時々ある。
二次元に変換した視点、と感じることもある。
掲出歌に加え、例えば下記の歌なども。

樹の下の泥のつづきのてーぶるに かなかなのなくひかりちりぼふ 

この歌も、私の好きな歌である。


にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ
スポンサーサイト

- 0 Comments

Leave a comment

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。