うたよむブログ

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ぼろぼろの皮膚をかぶつて象は立つ…(都築直子)

ぼろぼろの皮膚をかぶつて象は立つ 一握の糖、一会(いちゑ)の愛撫 
都築直子/『淡緑湖』H22

都築直子さんの『淡緑湖』より。

にぎやかな観光地で繰り返される、象と人との一期一会。
一首の背後からは、かなしいくらいに観光客の歓声やざわめきが湧きあがってくるようだ。

たとえばバンコク。
象はここに、ぼろぼろの皮膚を纏いながらいる。
人はそれをまるで大切なものを慈しむように、餌をやる、撫でてみる…。
そして、去るのだ。
そして、また人が来て…

永遠に繰り返すそのひとときの交流は、象がここにいる意味を危うくする。
ぼろぼろの皮膚をかぶった象は、その後は記憶でしか残らない。
象はここに立ちながら、人々の記憶の中でしか生き続けられないのだ。

そんな象の孤独は、下の句の糖と愛撫という、気まぐれな慈しみで一層際立つ。
どこまでも続く時間軸の中にある、一瞬の人々の楽しさと、永い象のかなしみ。
それを同時に見せられたような一首だ。


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